はじめに
近年、Windows 10 / 11 では標準でBitLockerによるディスク暗号化が有効になるケースが増えています。セキュリティ向上には非常に有効ですが、回復キーやパスワードを紛失すると、業務に重大な支障をきたすことがあります。
当社に寄せられたご相談の中で、実際に医療機関の業務が長期間停止してしまった事例がありました。本記事ではその経緯を一般化してご紹介し、BitLocker運用における注意点を解説します。
トラブルの発端:PINコード障害
障害発生の瞬間
あるサーバーPCにおいて、ログイン時に「PINコードが壊れています」というメッセージが表示され、Windowsにサインインできなくなりました。
通常であれば「パスワード」や「回復キー」を入力することで回避できますが、当該PCはシステムディスクおよびデータディスク(SSD×2台、HDD×1台)がすべてBitLockerで暗号化されており、回復キーが必要でした。
影響を受けたシステム構成
回復キーが見つからない
BitLockerの回復キーは通常、以下のいずれかに保存されます。
Microsoftアカウント
Outlook.com などのクラウド保存
Active Directory
企業ドメイン環境での一元管理
オフライン媒体
USBメモリや印刷用紙など
しかしこの事例では...
- 回復キーを保存したMicrosoftアカウントにログインできない
- 回復フォームを何度送信しても「情報不足」で却下される
- 登録情報(電話番号・生年月日など)が不十分
という理由から、回復キーを入手することができませんでした。
業務への影響
暗号化されているディスクには基幹業務システム(電子カルテやSQLデータベース)が格納されており、アクセスできなくなったことで以下の深刻な業務停止が発生しました。
患者カルテ参照が不能
過去の診療記録、処方履歴、検査結果などにアクセス不可
レセプト業務の停止
保険請求業務が完全停止、月末処理に重大な影響
行政報告義務の懸念
医療情報システムの停止に関する届出義務の発生
業務停止の経過
なぜ防げなかったのか
この障害が長期化した要因には以下が挙げられます。
回復キーの保存場所が不明確
Microsoftアカウントに頼っていたが、アカウント自体が利用不可に。複数の保存場所を確保していなかった。
セキュリティ情報の不足
メールアドレス・電話番号は登録されていたものの、Outlook利用履歴や支払い情報がなく、回復審査に通らなかった。
バックアップ計画の不備
データは暗号化ドライブのみに存在し、別媒体へのバックアップがなかった。
データサルベージとしての対応
当社では、以下の調査を実施しました。
暗号化ディスクのクローン作成
元データを保護しながら解析用コピーを作成
フォレンジックツール解析
専門ツールによるBitLocker構造の詳細調査
Microsoftサポート支援
アカウント回復申請の技術的サポート
長期調査体制
複数の復旧アプローチを並行実施
重要な注意点
ただし、BitLockerは設計上、正しいキーやパスワードなしでは解除できないため、調査や解析には長期化や高コストのリスクが伴います。
BitLocker復旧の技術的データ
教訓と対策
今回の事例から得られる教訓は以下のとりわけです。
1. BitLocker回復キーを必ず複数の場所に保存する
2. Microsoftアカウントのセキュリティ情報を十分に登録する
- 予備メールアドレスの登録
- 電話番号の登録と定期的な更新
- 認証アプリの設定
- Outlookの定期的な利用履歴作成
3. 基礎データは暗号化ディスク以外にもバックアップを確保する
⚠️ 重要な注意事項
回復キー紛失時の対応:
- • Microsoftアカウントでの確認を最優先
- • Active Directoryでの管理確認
- • 物理的な記録媒体の再確認
- • 復旧可能性:極めて低い
まとめ
BitLockerは強力なセキュリティ機能ですが、運用を誤る
データサルベージは、技術的に困難なケースでも最善の復旧手段を提供します。回復キーが失われた場合でも、早期に専門家へ相談し、適切な手順を踏むことで被害を最小限に抑えることが可能です。
